語り屋の 語りたる 語り物
女はそれをみて一笑した。
「あなたも飼っているくせに」
イーザは僅かに身じろいだ。
女はその反応を楽しんでいたが、ふと何かを思いついたようで、更にいたずらっぽい眼をしてイーザをみた。
「じゃあ、去勢してなくてもいいわ。なんなら倍額払いましょう。
イーザ、今宵は私の相手をしなさい」
今度は女は有無を言わさないオーラを放って言った。
女の脚を舐めている男奴隷が、ふと動きを止めた。
「私は奴隷商人であって、男娼ではございません。そのようなことは」
「もう、本当に味気ないわね…」
それからもやりとりが続き、女と血の契約をしてから、イーザは部屋をでた。
仲間は別の部屋で待機していたが、イーザの顔をみて苦笑した。
珍しく、うんざりとした表情が広がっていた。
「そこまでからかわれたんだな?色男というのも考えものだな」
ルンは冗談交じりにいってから、すぐに顔を引き締めた。
「で、どうする?これから」
イーザも、眼が瞬時に冷たくなった。
「断頭街からの通が来るまでは、俺たち自身からは動かないようにする。が、ただ」
「ただ?」
ルンが鋭くきき返す。