語り屋の 語りたる 語り物
そんな物騒な考えを天は見透かしているのだろうか。
今のイーザ達を照らすに相応しい、不気味なほどに赤い夕陽があたりを包み込む。
伝書鳩が、静かにイーザの指から羽ばたいていく。
鳥の進路は北。
その方角には、イーザ達、闇商人の脚では決して踏み入れることのできない、
聖地であり王都である『ノール』がある。
鳥の姿を見届けると、イーザは靴を編み直した。
逆光で、黒いシルエットが浮かび上がる。
その影は、他の何よりも深く濃いものだった。