語り屋の 語りたる 語り物



そんな物騒な考えを天は見透かしているのだろうか。

今のイーザ達を照らすに相応しい、不気味なほどに赤い夕陽があたりを包み込む。


伝書鳩が、静かにイーザの指から羽ばたいていく。



鳥の進路は北。



その方角には、イーザ達、闇商人の脚では決して踏み入れることのできない、

聖地であり王都である『ノール』がある。


鳥の姿を見届けると、イーザは靴を編み直した。


逆光で、黒いシルエットが浮かび上がる。

その影は、他の何よりも深く濃いものだった。





< 50 / 58 >

この作品をシェア

pagetop