語り屋の 語りたる 語り物
「アムス、こちらに来い」
イーザはアムスを呼び寄せる。
緊迫した面立ちで近くまできたアムスの額に、片手を当てる。
そして、もう片方の手で懐(ふとこ)ろから、細やかな鎖で繋がれた緑色の宝石を取り出し、アムスの目の前に見せる。
石には、金色の不思議な文様が彫り込まれていた。
それを吸い込まれるようにみるアムスの前で、
イーザはそのままの姿勢で低く小さな声で呪いを唱えた。
ひとしきり唱え終えたあと、石を懐(ふとこ)ろに隠す。
その途端、アムスは我に戻り、汗をびっしりとかきながら、荒く息をしていた。