語り屋の 語りたる 語り物


イーザも火に目をやる。

「…明日は我が身か、と思うのは、
何もお前だけではない。

だが、あいつらは
烙印を押されてからは、『命ある道具』となる。

情けをかけるな。

隙をみせれば喰われる。」


イーザの淡々とした言葉に、
そうだな、と呟くと、アムスは自分の膝を抱き寄せた。



アムスは心の優しい青年だ。

彼は彼の事情があって、
これを縄張りとしているのだろうが

正直、商売ごとには向いていない。
奴隷商人は、もっと向いていない。


対してイーザは、この商団の長を務めるほどには
人を欺き、情け容赦もなく、狡猾であるといえた。


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