溺愛されました
こ、これは、なに???
顔が、目の前に。
唇が。
咲希のファーストキスだった。
目を見開いたまま固まり、体の力が抜けた。
顔が離れる頃、ようやく我に返った咲希。
気が付いたら手が動いていた。
ぱん!!
静まり返ったコートに、平手打ちの音が響く。
「…いって」
「バカ!!最低!!大っ嫌い!!!」
バクバクと心臓が口から飛び出そうに高鳴る。
咲希は目を潤ませて部室に飛び込み鍵を掛けた。
「…あれはファーストキスですね」
「辱しめ、公然ワイセツ」
加織とあいに追い討ちを掛けられる。
「いや、違うやん!!あいつがあんなこと言い出すから!!」
「だからって、ねえ」
「関西人てデリカシーないですね。そやから振られるんですよ」
「いやいや、振られてへんし!!」
「あんなハッキリ嫌い言われて、振られた自覚ないんですね、気の毒に」
「あ~~もう!!わかった!!謝ったらええんやろ!?」
半ばヤケになり、頭をわしわしと掻くと、部室のドアを叩く。