溺愛されました
『大阪の』彼女
翌日。
樹荏は学校に来なかった。
予め断りは入れていたらしい。
「なんやろね~」
「あれだけ騒ぐと、おらんと静かやね」
コートが静けさに包まれていた。最も、これが本来の状態だけれど。
「咲希さん、何か聞いてます??」
「さっき教員室で、元もと休みだからとか言われたけど」
咲希もなんだか拍子抜けしていた。
「なんや、おもんない。せっかくオモチャが出来たと思ったのに」
取り上げられた子供のように拗ねる加織。
「あんなこと言って、案外自分が女遊びしてたりして」
あいが焚き付ける。
「あ~!!それ分からんかも!!地元大阪やろう?向こうに女いてもわからんやん??」
本人のいないうちに、新たに別の遊びを思い付く加織が爛々と目を輝かせる。
火種ほしさにワクワクする。
「先輩が付き合ってくれるんだし、関係ないから、大丈夫よ。どこに女いようと。最初から信用してないし」
昨日一日の出来事とは思えないほど出会い方も強烈で、最悪な男に思いもかけずグイグイ来られ、
勢いで初恋の鳴瀬に告白してしまったが、振られてもやっぱりね、と穏やかに過ごすはずだったのに。
夢でも見たのではと思いたかったが、あいたちの様子ではそうでもないらしい。
それに、未だにファーストキスの感触が残っているのが悔しい。