溺愛されました
「ご、ごめん!!」
車を路肩に止めて、若い男が飛び出した。
ほぼ、全身びしょ濡れの咲希。
「うっ、気持ち悪~い……」
辛うじて顔は背けたので濡れずに済んだが泣きそうだった。
「だ、大丈夫!?」
サラリーマン風のスーツ姿で、細身ではあるが捲った裾から筋肉質な腕が見えた。
切れ長の目で整った顔立ちだが、やや童顔でどことなく頼りなさげに見えた。
「大丈夫じゃないです!!」
ふと、胸元に視線を感じ、男が固まっている理由がわかった。
シャツが透けていた。
ガバッ!!
と胸を押さえると、慌ててスポーツバッグからタオルを取り出し充てる。
つかつかと男の前に戻ると、
「最っ低!!」
言って、自転車に乗った。
「ああ、ちょお待ってえな」
「はい!?」
「乗せてくから、道、教えてくれへんかな」