溺愛されました
「暴力なんてしてへんわ!!こいつは俺の」
諏訪の踵を思い切り踏みつけた。
「いっ…」
油断し、怯んだ隙に諏訪の腕を振り払い、背中に回って捻り返す。
「こいつは俺の『嫁』や!!もう決めた!!」
「えっ…!?」
「…ふん、やってくれるじゃないですか。柄の悪い関西人風情が」
腕を回してするりと抜ける。
「ではこうしましょう。次の日曜、そちらの高校と練習試合がありますね?そこで勝負しようじゃないですか」
「上等やん」
「何してるんですか??って、あれ?もしかして…」
遅いので様子を見に来た鳴瀬が、諏訪に気づく。
「元テニスプレイヤーの諏訪さん、ですよね??怪我して引退された…」
「あっ、そういえば聞いたことある」
咲希ですらすっかり忘れていた。
「結局のところ、丞さんは」
忘れていた!!
親戚の女性だ。
慌てふためく樹荏。
「あ~その話はまた今度!!な!!」
「この際、お見合いしちゃえばいいじゃないですか?どうせ咲希とは付き合えないんだし」
ここぞと鳴瀬が口を挟む。