溺愛されました
後ろのトランクに自転車を載せ、便乗した咲希。軽自動車だったのでキツかった。
普通では考えられない。
というか、知らない人の車に乗るなんて、どう考えてもおかしい。
頭に血が上っていた咲希は、そんな当たり前のことを考える余裕すらなかった。
ただ、遅刻はしたくないという思いしかなく、悪い癖だ、と乗ってから後悔する。
どこかに連れていかれても文句は言えない。
ただ、救いだったのは男の目的地は咲希の学校だったことと、男に邪な考えがなかったことだ。
しかし、5分も走ったらタイヤがパンクした。あり得ない。
予備のタイヤに交換したが結局遅刻だった。
「どういうことですか??」
着くなり噛みつく咲希。
「久し振りや、高校の校舎、懐かしいなあ」
聞いてないし。
というか、四国は微妙に方言の語尾が違う。
そういう咲希も去年、関東から来たばかりだったけれど。
「…あの、関西の方ですか…??」
怪訝な顔で咲希。
「やっと来ましたね!!校長室へどうぞ」
事務員の女性が待ち構えていた。
「その格好は…」
ジャージは持っていたが、着替えるにも場所もなく、ドロドロの制服姿のままだった。
何があったのかと驚く。