溺愛されました
生徒がざわつく。
「丞が徳兄(トクニイ)のコーチでテニス始めたから、私もやってたんやで。今は隣の県に住んでるけどな」
徳兄、というのは、たまこの義兄で守村徳のことだった。
やはりそれなりの腕と言うことだ。
「丞さんはすぐ他の女にちょっかい出すからな、心配なんじょ」
「お前なあ~勘弁してくれよ」
「咲希、来たよ」
諏訪が現れた。
自ら運転して、生徒を学校から小型の送迎バスに乗せてきたようだった。
「お互い、婚約者がいるなら問題ないですね」
微笑む諏訪。
「違うって言うてるやんけ!!」
「お互いって何ですか!?」
「えっ!?咲希さんの婚約者???このイケメンが!?」
「ますます勝ち目ないですね…」
「ええい!!外野!!うるさい!!」
言って咲希に向くと、
「たまこに負けたらアカンで!?」
「『試合には』負けませんから」
「私が勝ったら、旦那はもらいますから!!」
「いりませんから!!」
よくわからない火花が散る。