溺愛されました

何の根拠もなく、全員、樹荏が僅差でも勝つものとばかり思っていた。


だから、からかって諏訪の応援をしていた部分も少なからずあった。


まさか、これほどの惨敗を見せつけられるとは。


言葉をなくす一同。


咲希もズキズキした。
あんなに嫌いだと言ったのに。
負けてくれてほっとするはずなのに。


「………もう一回」


「はい?」


「もう一回!!勝負さしてくれ!!頼む!!」


「お断りします。何度しても同じこと」


静かに応える諏訪が、ものすごく冷たい人間に見え、さすがの咲希も樹荏が可哀想になった。


「…私からも、お願い」


「咲希まで、何を言い出すんです??約束は約束ですよ」



< 34 / 65 >

この作品をシェア

pagetop