溺愛されました
「な…」
後ろを付いて走っていた樹荏と鳴瀬の目の前で。
「咲希!!」
突然のことに、2人が呆然とする中、車は一瞬空噴かしし急発進して走り去った。
「待てやコラ!!」
「どっ、どうしましょう???」
鳴瀬があたふたする。
「くそ!!暗がりやしナンバーがカバーで見えへんかった!!とにかく110番や!!鳴瀬、携帯持ってるやろ!?俺はこのまま追っ掛ける!!」
「えっ?えっ??追っ掛けるって、相手、車ですよ!?」
「そんなん言うてる場合か!?」
「僕の携帯、圏外ですし…」
泣きそうになる鳴瀬。
舌打ちし、
「ああもう!!使えんヤツや!!」
「警察に電話して任せた方がよくないですか??僕怖いです」
言っている間に自分の携帯で掛ける。
キッ!!と睨み、繋がると鳴瀬に投げ渡し、
「本気で言うてんのか?!このヘタレ!!!もうええ!!お前はそこにおれ!!」
シフトチェンジでペダルを思い切り踏み込むと、山道を猛スピードで登っていく。
こういうときロードバイクは強い。
「俺様の脚力、嘗めんな!!」
樹荏にスイッチが入る。