溺愛されました

車がふらつき、減速する。
すかさず運転席から思い切り体当たりする樹荏。


「止まれって!!言うとんねん!!コラ!!」


とどめに車を抜いて前に回ると自転車から車に飛び移り、そのまま身を丸めて道路に転がった。


車の前から下に食い込んだ自転車が、グシャッと嫌な音を出す。


狭い田舎道の左車線のガードレールに当たって、段差から脱輪してようやく止まった。


「……はあ、やれやれ、他の車やら人がおれへんうちに片付いてよかった」


危うく巻き込んで大事故になるところだ。


少しの擦り傷で済んだ樹荏が、怒りを込めて車道側に残った後部座席のドアを蹴る。


歪んだドアをこじ開けると、気を失った咲希を見つけて抱き上げる。


「…この野郎…」


後部座席の男が席の後ろの荷物から木のバットを取り出して振り回し襲い掛かろうとする。


樹荏はあっさりバットを横取りすると、咲希を俵担ぎし、面を突いて奥に押し込む。そのまま奥のガラスに頭をぶつけ気を失った。


今度はよろめきながら運転席から出てきた男が背後から樹荏に襲い掛かろうとした。


車内に転がると蹴って歪んだドアを思い切り内側から蹴り外した。


全部外れたドアでつんのめった男が倒れて気を失う。




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