溺愛されました
「……会社が、危なくて」
意識が戻った諏訪が、父と2人、奥の部屋で。
「元々少人数で始めたんです。信用してた奴に、やっとの思いで完成した新作のデータと運用資金を持ち逃げされて」
項垂れる諏訪。
「連絡しても捕まらないし、困ってるところに、学校の用で来る便と、こっちの知り合いに会うタイミングが重なって」
黙って頷く父。
「こっちなら足もつきにくいし、狂言誘拐してみたらって持ちかけられて、夜来たのも様子窺うためで」
「だがもし、娘に傷をつけたらどうするつもりだった??それこそ信用できない相手じゃないのか?!」
語気を強める父に土下座する。
「申し訳ありません!!出来心なんです!!イタズラされるとか考えもしませんでした!!取られたお金のことしか頭になくて!!」
はーっとため息をつく父。
「とにかく、警察には行ってもらうよ?」
リビングに集まった咲希と母の前で、
「二度も危ないところを助けていただいて、なんと礼を言っていいか」
「いやいや、やめてくださいよ!!照れるやないですか!!」
さっきとは別人の樹荏を、ちょっと可愛いと思ってしまった咲希。
「正義はどうたらカッコええことよう言いませんけど、悪には負けたくないだけです」