溺愛されました
「た、助けてもらったからって、好きになりませんから!!私は鳴瀬先輩が好きだって何度言ってもわかってもらえないんです!!」
「お前まだそんな」
やきもきする樹荏。
けれどそう言いながらも、樹荏に強く惹かれていることは認めたくなかった咲希。
「ああ、そういうことなら、鳴瀬に諦めてもらえ、相手が悪い。その代わり泣かされたらいつでもシバいたるから言うておいで」
「な、先生まで!?」
「コーチなら、僕もいいと思うよ」
「先輩まで…」
「そういう訳で、来週からまた世話になるから、よろしゅう頼むわ」
満面の笑みで車窓から手をひらひらさせ走り去った。
「……そういうことらしいですよ、コーチ」
「……そんな!!いきなりそんなん言われても!!嫌や、咲希と離れるなんか、嫌や、なあ嫌やんな!?」
この人に遠距離恋愛はできないだろうな、と。
樹荏が肩を落とすと、恨めしそうに鳴瀬を睨んでから咲希を見る。
「…浮気すんなよ!?なあ!!絶っっ対あかんで??!!!」
「するなと言われると、余計、したくなりますね。やっと先輩と安心して付き合えます」
ここにも天の邪鬼がいた。
「なん…そんなんあかんて!!言うてるやん!!もう!!」