溺愛されました
賑やかし
――2ヶ月後。
夏本番になり、蝉の声が響く中。樹荏がいなくなった学校はすっかり平和な静けさを取り戻していた。
「それにしても静かやね~」
「あの人一人おらんだけで」
加織やあいたちも、物足りなさを感じていた。
「どんだけ騒いだんやアイツは」
守村も呆れる。
咲希も、ぽっかりと穴が開いたように何となくぼんやりしていた。
「―――っはあ!!!!!やっと着いた!!」
「えっ!?」
突然の声に、生徒全員、振り向く。
「えっ!?えっ!?コーチ???何してるんですか!?」
背中に汗染みの広がった真新しいスポーツウエア姿で、真新しいロードバイクから降りた樹荏。
ゆっくりと横たわり、コートの脇に大の字に寝転がってしまった。
「…な、なにって、……呼ばれたから、来たんや…」
もはやいろいろカラカラで、虫の息だ。