この冒険、ちょっとハ-ドモ-ド過ぎません?
〔第2話〕卒業証書はク-ポン券にもなる
『ん~…魔王討伐か-。
正直ダルくね?』
トキユメがピザを頬張りながら放った一言に、私は唖然とした。
『は?えっ…と、はぁ!?
アルコールで頭やられたの!?』
私は人目もはばからずテ-ブルを叩くように両手をついて立ち上がった。
『魔王を倒す為に魔王討伐科を専行したんじゃないの!?』
行きつけのピザ屋は昼時で賑わっており、数人の客が私を見ているのがわかった。
『残念だが、俺の目当てはコレだ』
そう言って、トキユメは1枚のカ-ドをポケットから出した。
それは、魔王討伐科の卒業証書であり、全国の討伐加盟店で使える割引ク-ポンにもなる素晴らしいアイテムだった。
『これさえあれば、酒も生活費もかなり安くで済むからな-』
トキユメはそう言ってビールをあおる。
『それは、魔王討伐にあたっての必要な経費の大半を王国が負担するという制度なのよ?
いくら討伐が義務じゃないからって、そんなの制度の悪用じゃない!
ちょっとミゼリアも何とか言ってやってよ!』
『食べてる時の私は、悟りの境地に居ますので』
このポンコツ食いしん坊め!!
『まあ、落ち着けよア-リッヒ。
考えてもみろよ。魔王を討伐しちゃったら、このカ-ドはただのゴミになるんだぞ?
魔王が居なくなった世界で、俺たちの学歴が一体何の役に立つ?
ブームが過ぎたお笑い芸人より惨めな人生を送りたいのか?』
何だその例え。
『確かに、ク-ポン以外に使い用がありませんからね。
もしかしたら、我々は魔王と共存していくのがベストな道かもしれません』
口回りをソ-スまみれにしたミゼリアまでそんなことを言う始末。
失望した…。
魔王が世界中に放ったモンスターたちによって大勢の人々が犠牲となり、今も苦しめられている。
そんな彼らを救いたいと願い、大学で知識や技術を身につけ共に進める仲間もできたと思っていたのに…
『親友だと思っていたのは私だけだったってことね…。
馬鹿みたい…。
もういいわよ…私は一人でも魔王を倒してやるんだから…!』
私は泣きそうになるのを必死で堪えてうつむいた。
『やっぱ曲げねぇよな、この頑固者は』
『それでこそ私たちのリーダーですわ』
突然の二人の言葉に私は意味が分からず顔を上げた。
『リーダー試験合格だ』
トキユメが笑った。
『おめでとうございます』
ミゼリアも微笑んでいる。
え、ちょっと何この展開。
『え?え?
まさか…二人で私をハメたの…?』
急にやってきた安堵に涙が溢れ落ちる。
『三人で旅するからには、リーダーってのを決めとかないとダメだろうからな。
まあ、一応の最終試験みたいなやつだよ』
『騙してすみません。
でも、ア-リッヒさんの強い信念が伝わりました』
涙の次は照れが訪れて、顔から火が出そうなくらい熱くなっているのが自分でもわかった。
きっと酷い顔なんだろうなと想像すると笑えてもくる。
そして、やっぱり二人は私の最高の親友だった。
『ウヒャヒャヒャ…!
なんちゅ-顔してんだよ!』
『ちょっとトキユメさん、笑っては失礼で…ぷぶぅ!!』
うん、とりあえずコイツら後でぶん殴ろう。