無糖バニラ
「……」

「……」


一瞬だった。

嵐のようだとは、正にこのこと。


翼はため息をついて、


「うちの母さん、思い込んだら人の話なんか聞かないから」

「いいの?あたしたちふたりでデート行くとか思っちゃってるよ」

「何言ったって無駄。時間に遅れそうだからもう行くぞ」

「うーん……」


いいのかな。

あたしは別に、誤解されても困らないけど。


……って、あれ?


「おい、何してんだ」

「う、うん……」


先に歩いていった翼が、あとをついてこないあたしに振り返る。

当たり前みたいに一緒に行こうとするとか、めずらしい。
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