無糖バニラ
追いつくために小走りをして、翼の隣へ。

あたしの顔をちらっと確認した後、翼は歩き始めた。

傘がなくても、隣を歩ける。

嬉しい……。


きっと、あたしとふたりきりだったら翼は来てくれなかった。

駅までの短い距離が、そばを歩くのを許された時間。


「スケート久しぶりだね。小学生の頃に、1回行ったことあったよね?」

「俺んちとお前んちで行ったやつな」

「そう、それ。氷硬いから、転ぶと痛いんだもん」

「コロコロ転がってたもんな」

「そんなことないよ。少しは滑れてた」

「滑って転んでたんだろ」

「失礼!」


翼と一緒の思い出がある。

それって、実はすごく幸せなことなんだと思う。

駅がもっと遠ければ良かったのに。
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