無糖バニラ
「ごめんね、このは。あたし、余計なこと言ったかも……」


自分の発言を気にした仁奈が、あたしに申し訳なさそうに耳打ちをする。


「ううん、大丈夫。いつもああなの。一々気にしないよ」


っていうのは、ちょっと嘘。

優しいと思ったら冷たくなるから。

言われるたびに、ちょっとずつ……胸が痛い。


「てか、あたしたちもホーム行こ」


仁奈が、前方を指差して歩き出す。

ついていこうとしたら、引き止められるように小嶋くんに腕をつかまれた。


「さっきの、お世辞じゃないよ」


仁奈に耳打ちされたのと同じように、囁かれた。

真っ赤になるあたしを見て、小嶋くんはニコッと笑った。
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