無糖バニラ


電車に揺られて、駅から5分ほど離れたところにある、屋内スケート場。

男用と女用に別れているロッカー室にそれぞれ入って、バッグから上着を取り出す。


「うわぁー、ここから厚着するとさすがに暑いね。早くスケート場行きたい」

「そりゃ、このはは暑いでしょ。外でも長袖だったんだもん」


仁奈が、パタパタと手のひらで自分を扇ぎながら長袖の上着の袖をまくった。


「だって……、翼に傷痕見られたくないから……」

「うーん……」


仁奈は難しそうな顔で首をかしげた。


「このはってさ、芦沢くんのことが好きなんだよね?」

「はい!?」


驚いて、ロッカーに入れるはずだったバッグを床に落とした。
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