無糖バニラ
「な、何言ってんの、仁奈!」

「え、違った?ごめん」

「……」


応えあぐねていると、仁奈はあたしのバッグを拾ってロッカーに入れて、代わりに鍵までかけてくれた。


「行こ。ふたり待ってるかもよ。あたし、スケート初めてだから楽しみ!」

「うん……」


仁奈に手を引かれ、ロッカー室を出た。


翼のことが好きだけど。

好きなことが当たり前で。

昔から。


ただ最近ではおかしなことに、バニラの香りを思い出すだけで、胸が苦しくなるということが、あたしを悩ませている。
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