無糖バニラ
「?」


それに気づいて、頭を上げると、自販機に鏡のように写った小嶋くんと目が合った。

それくらいに、ふたりの距離が近づいている。


どうしよう、動けない。

自販機のボタンを押そうとした人差し指が、行き場を失う。


「あのさ、今すぐじゃなくていいって言ったけど、そろそろ返事がほしい」

「は、はい……」

「俺を利用していいよ。まだ付き合ってるふりでいい。だから」


小嶋くんが、トンッと右手をついた時。


――ピッ、ゴトン。


自販機が、飲み物を落とした。
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