無糖バニラ
翼は、女子にはみんな冷たいはず……だったのに。

胸の音が、大きくなっていく。


「あー、やばい、笑ったぁ。芦沢くんって女嫌いだと思ってたからさ、こんなふうに話してもらえるなんて思わなかった」

「女嫌い?……ああ、うん」


歯切れ悪く答える翼に、仁奈がふふっと笑う。


「なんか、ちょっと分かったかも。芦沢くんが嫌いなのって、自分のことを好きな女子なんじゃない?」


翼のことを好きな女子。

翼が嫌いなのは……。


「よく分かったな」

「分かるよ。本人は気づいてないっぽいけど、」


仁奈の言葉の途中で、あたしはその場から逃げ出した。

腕に抱えていたはずの缶ジュースは、カランカランと音を立てて床に転がった。
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