無糖バニラ
「あれっ、まさか迷った?」


頭上から聞こえた声に、ビクッと肩が震えた。


「具合悪い?」


そっと顔を上げると、つい先ほどまで一緒にいた人物。

小嶋くん。


「ううん、大丈夫……。ありがとう」


あんな別れ方をしたから、お互い気まずくて目が合わせられない。


――『俺を利用していいよ。まだ付き合ってるふりでいい』


……だめ。

こんなことを思い出しちゃ。


誰かと付き合えば。
好きじゃないと、翼本人に分かれば。

嫌われなくて済むかもしれない。

こんな最低なことを、考えちゃいけない。
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