無糖バニラ
ピクッと指先が動く。

……だめ。
動揺を悟られちゃ。

あたしは、小嶋くんに気づかれないように視線だけを動かす。

その先にいる翼は、あたしのことなんか見ていなかった。


「……」

「どうしたの、内海」

「……なんでもない」


心配をしてくれた小嶋くんに、作り笑顔を返す。


あたしは、小嶋くんの彼女。

フリなんかじゃない。

フリなんかじゃなくなる。

きっと、好きになる。


今はまだ、嘘だけど。


目を伏せる直前、一瞬翼と目が合ったような気がした。
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