無糖バニラ
「えっ!?」


翼ママが、あたしたちが隠れている姿に驚くけれど、涙目の切羽詰まった表情で首を振るあたしを見て、何か察したらしい。


「……すみません、お待たせしました」


何事も無かったように、代わりに会計を済ましてくれた。


「ありがとうございました」


翼ママの声と、扉が開く音で、緊張の時間が終わったことを知る。


「はぁー……」


やっと解放されて、床に座ったまま大きく息を吐いた。

く、苦しかった。


翼もめずらしくぐったりしているように見える。


「もう、どうしたの?ふたりとも。びっくりしたじゃない。もしかして、またあの子たちも翼のファン?」

「……知らね」

「全く、もう。あんたのこと、いい男に産みすぎたわね」


ふたりの会話に、あたしだけ追いつかない。

「また」って、言った?
< 272 / 461 >

この作品をシェア

pagetop