無糖バニラ
「前も、何かあったの?」

「お前には関係ない」


あたしをばっさりと斬り捨てる翼を、翼ママが「こらっ」と可愛く怒る。


「この店、中学からも割と近いでしょ?たまたま来た女の子がね、翼のこと好きだったらしくて。店番の翼を見るために何人も引き連れて毎日キャーキャー騒いで、大変だったことがあったの。もう去年の話だけどね」

「本当?知らなかった……」

「このはちゃん、ちょうど来なかった時期だったからね。お客様としてならまだいいんだけど、何も買わないでただ来るだけだから、他のお客様にもちょっと迷惑になっちゃって」

「そうなんだ……」


隣の家なのに、少しも気づかなかった。

あたしはひとりで、翼に冷たくされることが辛いことしか考えていなくて……。


「どさくさ紛れに万引きもあったしねー。翼、去年はずっとイライラしてたよね?」

「……」


翼は、何も答えず眉間にしわを寄せるだけ。


それは、確かに女嫌いにもなるかも……。
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