無糖バニラ
「……」

「……」


こんなに嫌がられているなら、あたしは帰った方がいいかな。

だけど、このままじゃ悔しいから。


「なんであたしだけはバイトしちゃいけないの?」


理由くらいは言わせる、絶対。

「嫌いだから」ってはっきり言うなら、「もう好きじゃなくなるから安心してよ」って……、……言えるかな。

無理かな。

ケンカ腰で尋ねたのが悪かったのか、翼もムッとしているように見える。


「お前がここでバイトして、さらに俺の家だってバレたら大変だからだろ」

「大変って何?翼の家でバイトして、何が困るの!?」

「そんなことも分かんないのかよ!」

「分かんないよ!」


売り言葉に買い言葉。

お客様がいなくて、本当によかったと思う。

ただのケンカになりかけた時。


「去年みたいに、お前が傷つけられたら嫌だからだよ!」
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