無糖バニラ
予想した返答の、どれとも違う。

あたしは言葉を無くして、目を見開いた。

翼も、ばつの悪そうな顔をしている。

きっと言うつもりもなかったのだろう。


「傷って……なに?」

「……左腕の、俺のせいでついた傷」

「何言ってんの?」

「俺のせいだろ。傷あと、残ってんだろ。そのせいで、お前はどんな時でも腕を出せなくなった」

「そんなふうに思ってたの……?」


あたしは下を向いて、唇を噛んだ。


バカ、バカ、バカ!

翼は何も分かってない。
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