無糖バニラ
あたしは、翼の胸をひとつ殴った。


「けほっ、お前……――」


きっと、この暴力に対しての文句を言おうとした翼が、あたしの顔を見て、その先を止めた。

それは、真っ赤な顔で涙目だったから。


「翼のせいじゃない!そんなの思ったことないよ!あたしはもう痛くない!何も気にしてない!こんなことに責任感じないで!」


ボロボロと大粒の涙が溢れる。


「隠してるのは人に見られたくないからじゃない。腕を見るたびに、翼が悲しい顔をするからでしょ!見たくないの、あたしのせいで辛そうにしてるのなんか!」


実際、翼のいないところでは、あたしは傷あとなんか気にもしないで腕を出している。

あの表情を見たくないからしていたことが、裏目に出ていたなんて。
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