無糖バニラ
ううん、だめ。

翼のそばにいることの心地良さに、甘えちゃいけない。

まだ……。


今度こそ帰ろうと決心して、階段に向かうと、扉が勢いよく開いた。


「このは!」

「えっ……」

「まだいた」

「うん、帰るね……」

「送る」


送るって言ったって、うちはすぐ隣。

瞬きを2回くらいすれば着いてしまう距離。

……でも。


「ありがとう。……送ってほしい」


あたしは、翼の指先を握った。
< 394 / 461 >

この作品をシェア

pagetop