無糖バニラ


裏口から入ったあたしたちだったけど、帰りはお店を通ることにした。

お客さんいるのかな。

翼ママは、きっとレジにいるよね。


階段を下り切って、あたしは握った翼の指を離すけど、すぐにぎゅっと手を握り返された。


「え、ちょっと、あの……」


このままだと翼ママに見られると思って焦るのに、翼は平然としている。


「いいから」


と、あたしの動揺なんて打ち消すように、手を引いた。
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