無糖バニラ
「バニラ味」
*
翌日。
あたしはいつもよりも気合を入れて、家を出た。
「いってきます!」
ママに元気にあいさつもして、すぐに隣の家を見た。
もう行っちゃったかな……。
一緒に学校行こうなんて約束をしたわけじゃないから、それでもしょうがないんだけど。
ちょっとだけ……、待っててみようかな。……とか。
そんなことを考えて立ち止まっていると、隣の正面玄関が開いた。
――ガチャッ、リンリーン。
いつものベルの音も、今日は違って聞こえる。
違うのは、あたしのこの気持ち。
「いってきます」
低くて、少しの甘さを感じるその声に、自然と背筋がぴしっと伸びた。