無糖バニラ
「ちょっと、このは。後でしっかり話聞くからね」


翼には聞こえないように、仁奈が耳元でこそこそ話。


「うん、きちんとしてから、話すね」

「うん?分かった」

「ありがとう、仁奈」

「何でお礼とか言ってんの?ウケる」


仁奈は、本当に嬉しそうに笑って、あたしの体から手を離した。


「やっぱりあれ、あの子じゃん?」

「えー、やだー!」


忘れかけていた、周りの噂する声がまた戻ってくる。

何だか、さっきから、あたしと翼を見て言われているような……。

仁奈だって一緒にいるのに。


変な感じがする。

なんていうか、これは……嫌な胸騒ぎ。
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