無糖バニラ
ぷるぷる震える手で、自分の頭をさわる。

心なしか、ここだけちょっと温かいような……。


「こーらー!もー、このは!何があったの!?絶対あったよね!?どういうこと!?仁奈ちゃんには一番に話しなさーい!」

「わわっ、苦しい」


仁奈が、首に後ろから腕を回して、締め上げてくる。

昇降口を通る生徒たちが、あたしたちを見てから過ぎていく。


「芦沢くんって笑うんだね?笑顔めっちゃイケメンじゃん!あー、あたしだって彼氏欲しいよー!」

「ちょ、仁奈、痛いって」


ふたりでふざけていたら、ドンッと誰かの肩とぶつかった。

姿を確認してみると、クラスメイトの女子。


「あっ、ごめんなさい!」


慌てて謝るけど、ギロッと顔を睨まれた。

仁奈とふたりで、萎縮してしまって、身を引く。

彼女は、そのままあたしたちを無視して行ってしまった。
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