無糖バニラ
その場でぐずぐずしていたら、突然背中から声をかけられ、飛び上がった。

振り向くと、そこには翼。

エプロン姿のままで、なぜかとても不機嫌そうに眉を寄せて。


そうだ、ここはまだ翼の家の敷地内。


「な、なに?邪魔?すぐ帰るよ……」

「ほら」

「?」


ずいっと片手で差し出されたのは、透明なラッピング袋に入ったクッキー。

商品名も何も書いていないけれど、


「あっ、バニラクッキー」

「何で分か……、ああ、バニラビーンズ」

「それもなんだけど、昔からバニラクッキーだけは他のと形が違うから。なんか……でこぼこっていうか」

「……」

「いたっ」


翼に、ドスッとチョップを食らわせられた。
しかも頭のてっぺん。
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