無糖バニラ
以前なら平気でやっていたことも、大きくなるにつれて難しくなってくる。

お互いの親には、あたしたちの関係を知られているけど。

知られているからこそ、なおさら。


「朝、俺がいなくても、ちゃんと遅刻しないようになったじゃねーか」

「そういうことじゃなくて……」


隣にいるから。……だから。

しようと思えば簡単に縮まるこの距離がもどかしい。

もっとずっと離れていたのなら、諦めがつくのに。

恋に自覚してしまったから、我慢できたことができなくなる。


しゅんと肩を落としたことに気づいたのか、翼はため息をついた。


「……分かった。俺が行く」
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