無糖バニラ
翼がこの部屋に来るのは、去年以来になる。

あたしがケガをして、ベッドで寝ていたらキスを……。

思い出して、体中の体温が上がる。

付き合っているふたりが、部屋にふたりきりになったら。

……それは。


あたしは窓枠から離れて、両手を広げた。


「翼、こっち来て」


翼は少し驚いた表情を見せて、すぐに口元に笑みを浮かべた。


甘い香りが、部屋に舞い込む。

ぎゅうっと強く抱きしめ合って、唇を重ねた。


また、ここから始まる。


あたしを包む、大好きなバニラ。



END
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