無糖バニラ
突然、視界がぐにゃっと歪む。

気持ち悪さを感じて目を閉じ、開けた時に飛び込んできたのは、中学の中庭だった。


「え?」


なにこれ。

なんで……。

さっきまで、部屋で翼と……。


「あんたがいるから、翼くんが!消えてよ!」


耳を貫く、女の叫び声。

手には、カッター。

ハッと気づいた時には、もう遅かった。


「このは!」


あんなに切羽詰まった翼の声を聞いたのは、初めてだった。


――夢は、こっちだ。
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