クールな先輩への溺愛宣言!!
そしてとうとうこの時がやって来てしまった。
「和くんの家って、左よね?」
「はいっ。・・・そういえば前に、一緒に左に曲がりましたよね。先輩のお婆ちゃん家は右なのに、わざわざ遠回りして」
「確か、慣れは怖いなって君に言ったのを覚えてる」
ほんの少し前の話なのに、なんだか懐かしく思えてしまう。
「あの時は、まさか和くんと付き合うことになるなんて思ってもみなかった」
「僕も、先輩と付き合えるなんて思ってもみなかったです」
「いろいろあったものね」
「いろいろありましたね」
「和くん、私を慣れさせちゃダメよ?」
「えっ!?」
「和くんなら、きっと慣れようにも慣れないかも」
「それって良いことなんですか?」
「良いことなの」
なんて話していると、直ぐに僕の家に着いた。
今日は、両親も妹も出かけている。
デートを約束したあの日、「日曜日に先輩が来るから」って言ったら、気を利かせて出かけてくれた。
ああ、そうか。
そのとき妹も聞いてたから、そのあとすぐに真司に連絡したんだろうな。
妹と真司は割と仲が良いし。
「和くん、ご家族は?」
「お邪魔します」と言って家に上がった先輩は、家の静けさに驚いた。
「気を利かせて、皆出かけちゃいました」
「優しいのね」
あの時の家族の祝福の眼差しを思い出したら、何とも言えない心境だ。
「先輩」と言っただけで、彼女だなんて言ってないのに・・・。
どうせ、妹と真司の間で僕の情報が行き来してるんだろう。
「あ、僕の部屋階段上がって一番奥なんで、先に行っててください。お茶持っていきます」
皆いないってことは、今この家には僕と先輩のふたりきり・・・。
「ありがとう」
先輩は見る限り平常心で、緊張しているのは僕だけなのかな、なんて思ってしまう。
緊張で震える手をなんとか誤魔化しながら、お茶とお菓子を乗せたトレーを先輩のいる部屋へと持って行った。