プリズム!
(…なんだかなぁ…)


夏樹は心の中で小さく溜息を吐いた。

(オレが夏樹だって分かった途端、こうも態度が変わるもんなんだな…)

冬樹である時は、何だかんだ(なつ)いて傍に来てはいたけど、ここまで自分に気を使ったりすることはなかった。

父親の事件のことで負い目がある…というのも勿論あるのかも知れないが、流石にこれはあからさま過ぎだろう。

(ある意味、これは女の子扱い…?なのかも知れないけど。この変わりようは素直に喜べないな…)

目の前に立ち尽くしている力を見上げると、心配げにこちらの様子を伺う様な目をしている。

夏樹は心の中で苦笑を浮かべた。


「もう、良いってば」

そう言うと、夏樹は区切りを付けるようにゆっくりと立ち上がった。

そして力の傍へ半歩近付くと、力にしか聞こえない程度の声音で低く呟く。

「本当のこと言うとさ…。オレ、お前に文句言いたいこと沢山あったんだけど…。別荘でのこととか、さ」

今までと少し違う『冬樹』の低い声を出す。

途端に、力がぎょっ…とした様子を見せた。
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