プリズム!
その驚き様に夏樹は満足気に笑みを浮かべると、小さく言葉を続けた。

「でも、もう忘れてやるよ。だから、この話はこれで終わりな?」

『冬樹』を前面に出して言うと、力が何か言いたげに複雑な表情を見せた。

「じゃあ、またね」

今度はわざと女の子らしさを出して優しく微笑むと、夏樹はゆっくりと歩き出した。


すると、後ろで力がぽつりと呟いた。

「…なぁ…」

「えっ?」

その声に振り返ると、力が妙に深刻そうな顔をしている。

「お前達兄妹は、さ…。昔からよく入れ替わってたんだろ?そうやってお前も『冬樹』演じたりしてさ…。でも、それってさ…、もしかして…」

「?」

何を言いたいのか分からず、夏樹が首を傾げた時だった。

「昔、俺が奪った夏樹のファースト・キス…。もしかしてあれも、本当は冬樹の方だったなんてことは、ないよな?」


「……っ!!」


その瞬間、ドスッ…という鈍い音がした。

それは、賑わう校内で周囲の者達に聞こえることはなく。


共にいた少女が静かに去った後、そこには一人腹を抱えてうずくまる男の姿があったのだった。


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