プリズム!
だが…冬樹でいたかったという、夏樹。

その理由が…。

『ずっと雅耶の隣にいたかった』

『ずっと一緒に、笑っていたかった』

…というのは。


(ヤバイ…。すげー嬉しいんだけど…)


そんな雅耶の気持ちなど知る由もない夏樹は、泣きながら言葉を続けた。

「ふゆちゃんは…前を向いて、ちゃんと頑張ってるのに…っ…。…オレ、…っ…」

(そこでまた、罪悪感を感じてる訳か…)

雅耶は、そっと右手を夏樹の頬へと伸ばすと、ぼろぼろと零れてくる涙を親指で優しく拭った。

「なぁ…夏樹?そんなに自分ばっかりを責めるなよ。それにさ、別に『冬樹』じゃなくたっていいんじゃないか?今の…夏樹のままでずっと隣にいて、一緒に笑っていればいいじゃないか」

そんな、過去形なんかにして欲しくない。

今も、これからも…ずっとお前に隣で笑っていて欲しいと、そう思っているのに。


だが、夏樹は弱弱しく首を振った。

「だって…変われないんだっ…。折角、清香先生に服…借りたって…。こんな服着てたって、オレ…何も変わってないっ…」

そう言うと、ずっと大事そうに両手に握っていたものをそっと開いた。

(それは、俺があげた…)

夏樹の手の中にあったのは、あの…お揃いのマスコットだった。

< 152 / 246 >

この作品をシェア

pagetop