プリズム!
不確かな立ち位置。

綺麗で可愛い女の子は世の中に沢山いて。

雅耶の隣にも、きっと…そんな女の子が似合う筈で…。


「オレは、唯花ちゃんや…早乙女さんみたいな女の子には、到底…なれそうに…ないから…っ…」

「…ちょっ…、待てよ。夏樹っ…」

どうしてそこに『唯花ちゃん』や『薫先輩』が出てくるんだ。…とのツッコミを雅耶が入れる前に、夏樹が(たた)み掛けるように続けた。

「雅耶の隣にずっといたいけど…っ…。オレの居場所…っ…もう、どこにもない気がしてっ…。そう思ったら、胸が痛くて…っ…苦しくてたまらなくなって…っ…」


再び、小さく肩を震わせながらも、その胸の内を語る夏樹に。

雅耶は信じられない思いで、その瞳から溢れ落ちる雫を呆然と眺めていた。



『雅耶の隣にずっといたい』


雅耶の頭の中では、その夏樹の言葉だけが何度も繰り返しリピート再生されていた。

夏樹がそこまで自分を想ってくれてるということが、正直驚きで。

嬉しさの余り、すぐに反応出来ずにいた。

だがそんな間にも、目の前で涙を零し続ける夏樹に。

「俺も、お前も…考えてることは同じなんだな…」


相手を取り巻く環境の中に己が入り込めずにいる疎外(そがい)感。

今まで近くにいた分、会えない時間が増えれば増えていく程、不安は募っていって。


「でも、夏樹…?お前は大きな勘違いをしてるよ」

雅耶は小さく息を吐くと、立ち上がった。

すると一瞬、夏樹の肩が怯えるように僅かにビクリ…と反応する。
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