プリズム!
そこへ再び強い風が吹き抜けていく。

木の葉が舞い散る中、だが二人は微動だにせず見詰め合っていた。


昔から変わらない、真っ直ぐな瞳。

(感情が(たかぶ)るとすぐ泣いちゃうのも、昔から…だよな…)

雅耶はフッ…と、小さく笑うと、言葉を続けた。


「もう二度と会えないと思っていた、あの絶望を思えば…。お前自身がこうしてここにいる…、存在してくれていることそのものが、俺にとっては本当に奇跡なんだよ」



「…まさや…」


『存在してくれていることそのものが奇跡』

そんな雅耶の言葉に。

先程までとは違った切ない痛みが夏樹の胸を襲う。


「だから…俺は、お前がここに居てくれるだけで良い。他の誰が何と言おうと、俺は今のままのお前が好きだよ」


自分に向けられる、雅耶の優しい眼差し。

そして、その温かい言葉が自分の気持ちを浮上させていく。

あんなに訳が分からない程悲しくて、苦しかったのに。

雅耶の言葉が、こんなにも嬉しくて仕方がないなんて…。

(オレ…何てゲンキンなんだろ…)

自分の気持ちに呆れつつも、改めて思う。


(オレ…雅耶のこと、本当に好きだ…)

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