プリズム!
そんな素直な様子に、雅耶は満足げに笑うと。

「だったら、それだけで十分じゃないか。冬樹が無事だったから、お前は夏樹に戻れた。ただ、それだけのことだよ。それ以上、お前自身が無理に変わろうとする必要なんて何もないんだ。言葉遣いが少し位男言葉だろうが、男(まさ)りで喧嘩(ケンカ)(ぱや)かろうが、良いじゃないか」

「……う…」

その言い回しに一瞬夏樹が顔を引きつらせたが、雅耶はその様子を面白そうに眺めながら言葉を続けた。

「俺にとっては…そんなお前が愛しくて、愛おしくて…(たま)らないよ」

そうして、ゆっくりと夏樹の方へと向き直ると、そっとその頬へと手を伸ばした。

「ま…」


(まさや…?)


ドキリ…と、大きく心臓が跳ね上がる。

『カーッ』…という音が雅耶にも聞こえてしまいそうな程、頬に熱が上がって行くのが自分でも分かった。

左頬に優しく添えられている、雅耶の大きな手の温かさに。

まるで魔法をかけられてしまったかのように身動きは取れず、その雅耶の瞳から視線を外せない。

いつもとは何処か違う、大人びた表情の雅耶の顔がゆっくりと近付いて来る。

それは普段通りの優しい瞳だったけれど、何処か熱の(こも)ったもので…。


「…夏樹…」


そう優しく名前を呼ばれた時には、既に雅耶の瞳は間近まで迫っていて。

じっ…と見つめてくるその瞳に、あまりの恥ずかしさに耐えられず、思わず目を閉じると…。


そっと…優しく唇を塞がれた。

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