プリズム!
最後の部分は独り言のような呟きだったのだが、思わぬ単語を聞いたような気がして、夏樹は思わず目を丸くした。

だが雅耶はにっこりと笑うと、わざとそこはスルーする。

「さて…じゃあ、そろそろ行こうか。ここは結構冷えるし…、風邪引いたら大変だ」

そう言って、座っている夏樹に向き直るとエスコートするように、そっと手を差し出した。



雅耶に手を引かれて、ゆっくりと立ち上がった夏樹だったが、思わず襲った足の痛みに僅かに顔をしかめた。

「……っ…」

「…夏樹?…どうした?」

その様子に気付いた雅耶が、すぐさま心配げに夏樹の顔を覗き込んで来る。

手を繋いだまま、再び間近から雅耶に見つめられて夏樹は慌てた。

「あっ…いや…ちょっと…」

「…ちょっと?」

「う…。…その……」

誤魔化(ごまか)しきるには少し困難な痛みに、夏樹は隠すことを諦めると、先程絡まれた際に暴れて足を(ひね)ったことを雅耶に告げた。



「呆れた…でしょう…?」

失態だと思っているのか、夏樹が上目遣いにこちらを見上げてくる。
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