プリズム!
人相まではハッキリとは判らないが、思わぬ人物を見た気がして夏樹は慌ててドアを開けた。

突然勢いよく開いた目の前の扉に、その人物は一瞬驚いた表情を見せていたが、律儀(りちぎ)に「こんにちは」と挨拶(あいさつ)をしてくる。

「久し振りだね、なっちゃん。元気だった?」

そこには少し照れ笑いの表情を浮かべた兄、冬樹がいた。


「ふゆちゃんっ!!」




「どうしたの?急に…。いつ、こっちに?」

冬樹を家に招き入れながらも、聞きたいことは山程あって。

落ち着かない様子の夏樹に、冬樹は優しい笑顔を浮かべた。

「並木さんの仕事の手伝いで一緒に来たんだけど、少し余裕が出来てさ。折角近くまで来たし、たまにはちゃんと顔見せて来たらどうだって並木さんが時間をくれたんだ」

「そうだったんだ…。相変わらず忙しそうだね?あ、奥…座ってて?狭いけど…」

夏樹は「今、お茶入れるね」と言いながら戸棚からカップを取り出している。

「あ、ありがとう。お構いなく…」

そう言いながら、冬樹は通されるままに奥の部屋へとゆっくり足を運んだ。
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