プリズム!
「…そういうもの?」

「え…?うーん…。普通は…そう、かな?雅耶とか緊張してなかった?」

思わず浮かんだ幼馴染みの名前をそのまま出すと、夏樹が顔を真っ赤に染めて反応した。

「なっ…何で急に雅耶が出てくるのっ?」

その慌てようが可愛くて何だか微笑ましくて、冬樹は思わず小さく吹き出して笑った。

(…相変わらず、なっちゃんは判りやすいな…)

そんな昔と変わらない所が、妙に嬉しく感じる。

くすくす笑っている冬樹に、夏樹は少しだけ頬を(ふく)らませると、照れ隠しのように「ほら、いつまでも笑ってないで座ってよね」と奥へ行くように急かした。

「はーい。お邪魔しまーす」

冬樹は素直に言うことを聞いて、テーブルの横に座ることにした。


八年という長い期間会えずにいたのに、その年月を感じさせないお互いのやり取りに、冬樹も夏樹も…二人ともが何処か安心して。

そして、救われる想いがした。



「ごめんね、座布団も何もなくって…」

冬樹が座ると、夏樹がカップを二つ乗せたトレーを運びながら申し訳なさそうに部屋に入って来た。

< 173 / 246 >

この作品をシェア

pagetop